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その「重度」は誰が決めるのか――障がい者職業センターの重度判定について

2025.09.08

こんにちわ ぐろーあっぷです

 

まだまだ残暑が厳しい毎日ですね。少しの気温の変化も体調に影響が出るかもしれないので気を付けていきたいと思います。

 

今日は「重度判定」についてのお話です。

 

「働きたいけれど、どこまでできるか不安がある。」

障がいを持つ多くの方が抱えるこの思いに寄り添い、支援の第一歩となるのが、障がい者職業センターで行われる「職業評価」です。中でも注目されるのが「重度判定」というプロセス。これは、就労支援の必要度や配慮の必要性を見極めるために重要な役割を果たします。

しかし近年、この「重度判定」がもたらす影響や、評価のあり方について疑問や戸惑いの声も少なくありません。


■ 「重度判定」とは何か?

障がい者職業センターでは、身体・知的・精神など様々な障がいを持つ方に対し、職業準備性や能力、作業耐性、対人スキル、集中力などを評価します。

その結果、障がいの程度や支援の必要性に基づいて、「重度」とされるかどうかの判断が下されます。
この判定結果は、以下のような点で大きな影響を与えることがあります:

  • 就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)の利用要件

  • 特例子会社や福祉的就労への紹介可否

  • 雇用支援制度(障害者雇用納付金制度など)の対象判断

  • 就職活動時の企業側の受け入れ姿勢

このように、「重度」と判定されるか否かは、本人の働き方・選択肢・福祉資源へのアクセスに直結する、非常に大きな意味を持ちます。


■ 判定に潜む「線引き」の難しさ

しかし問題は、重度かどうかを「数値化」し、「一律」に判断することの限界にあります。

障がいは、単なる身体機能の低下ではありません。環境や対人関係、過去の経験、体調の波などが複雑に絡み合っています。

たとえば、知的障がいでIQが70未満であっても、職場での環境が整えば十分に業務をこなせる人もいます。逆に、数値上では中等度と判断された人が、精神的不安やストレスにより就労を継続できない場合もあります。

現場では、「この人は明らかに支援が必要なのに“重度”と判定されなかった」「逆に、本人は働く意欲があるのに“重度”の判定で選択肢が狭まった」など、制度の“線引き”に苦しむ声が少なくありません。


■ 制度の支えと、支配の境界線

「重度判定」は本来、適切な支援を提供するための“支え”であるべきです。
しかし、判定が本人の意思や可能性を“制限”してしまうと、それは「支配」へと変わってしまいます。

支援の入口であるはずの職業センターで、「あなたは重度だからこの道しかない」「あなたは軽度だから支援は難しい」と決められてしまうことは、就労支援の本来の目的――個々の可能性に合わせた働き方を支えるという理念から外れてしまいます。


■ 今、求められる視点

重度判定の制度そのものを否定することはできません。必要な支援を適切に届けるためには、ある程度の客観的な基準は必要です。

しかし、それと同時に、以下のような視点の転換が求められているのではないでしょうか。

  • 「できないこと」より「できる方法」に注目する評価軸

  • 本人の意欲や希望を尊重する対話的評価プロセス

  • 一時的な状態を固定化しない“再評価”や“柔軟性”

  • 地域や職場との連携による実践的なマッチング

障がい者雇用の未来は、「どのくらい重いか」ではなく、「どうすれば共に働けるか」という視点から始まるべきです。


■ おわりに:可能性にフタをしない社会へ

障がい者職業センターの重度判定は、働くことに不安を抱える人たちにとって、支援の扉を開く重要な鍵であると同時に、ときにその扉を閉ざす「ラベル」にもなり得ます。

その一人ひとりの可能性にフタをせず、評価を“支配”ではなく“支援”に変えるためには、制度だけでなく、それを運用する私たち一人ひとりのまなざしの優しさと、柔軟さが必要です。

“重度かどうか”ではなく、“どう生き、どう働きたいか”。
その問いに、社会全体が真摯に向き合う時が来ているのかもしれません。