日本と世界を比較する障がい政策と支援の違い――未来へのヒントを探して――Blog
日本と世界を比較する障がい政策と支援の違い――未来へのヒントを探して――
こんにちは、ぐろーあっぷです。
2025年の大阪・関西万博もいよいよ閉幕が近づいてきました。
今回の万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、世界中から多様な人々が集まりました。
会場ではバリアフリーの移動経路や手話通訳、視覚障がい者向けナビゲーションアプリなどが整備され、誰もが快適に楽しめる工夫が見られました。
世界の国々がどのように“誰も取り残さない社会”を実現しているのかを肌で感じる機会になった方も多いのではないでしょうか。
では、日本と海外では、障がい者支援にどのような違いがあるのでしょうか。
◆日本の障がい者政策の特徴
日本では「障害者基本法」や「障害者総合支援法」に基づき、福祉サービスや就労支援が体系的に整備されています。
特に働く場の確保を目的とした「障害者雇用促進法」では、企業に対して法定雇用率(現在2.5%)が義務づけられています。
また、就労継続支援A型・B型など、働く能力や体調に応じて段階的に仕事へつなぐ制度もあります。
しかし日本の支援はどうしても「制度の枠」に合わせる形になりやすく、個々の希望や暮らし方に十分寄り添いきれていないという声もあります。
地域ごとのサービス格差や、社会全体での理解不足も課題です。
◆海外の取り組みから学ぶこと
世界では、障がいのある人の「権利」を中心に据えた政策が主流になっています。
たとえば――
■アメリカ:差別をなくす「権利の保障」
アメリカでは1990年に制定された「ADA法(Americans with Disabilities Act)」が大きな転機となりました。
この法律では、障がいのある人への差別を雇用・教育・交通・公共施設などあらゆる分野で禁止しています。
企業や学校には“合理的配慮(Reasonable Accommodation)”を提供する義務があり、例えば在宅勤務の導入、段差の解消、コミュニケーション支援などが求められます。
特徴的なのは、「支援=特別扱い」ではなく「すべての人が平等にアクセスできる環境づくり」という考え方です。
社会全体が「権利の保障」を前提に設計されているのです。
■北欧(スウェーデン・デンマークなど):生活全体を支える社会
北欧諸国では、“障がいのある人が地域で自立して暮らせること”を最も大切にしています。
スウェーデンでは、障がいのある人も一般企業で働くことを前提に、専門支援員が「職場への同行支援」や「作業環境の調整」を行う仕組みがあります。
また、必要に応じて24時間体制の個別支援(パーソナルアシスタンス)が受けられ、住まいや教育・交通もほぼ完全にバリアフリーです。
デンマークでは「フレックスジョブ制度」という柔軟な雇用形態があり、体調や障がいの程度に合わせて勤務時間や仕事内容を調整できます。
これにより、就労継続率が高く社会とのつながりを保ちながら働く人が多いのが特徴です。
■イギリス:教育から始まるインクルージョン
イギリスでは「Equality Act(平等法)」により、あらゆる差別が禁止されており障がい者だけでなく、人種・性別・宗教などの多様性も尊重されています。
特に教育分野では“インクルーシブ教育”が進んでおり、特別支援学校だけでなく一般学校でも障がいのある子どもが共に学ぶ体制が整っています。
学校には「特別教育ニーズ調整担当者(SENCO)」が配置され、学習方法や環境を個別に調整します。
このような教育を通して、子どもの頃から「障がいは特別なことではない」という意識が社会全体に根づいています。
◆万博が教えてくれた未来のヒント
今回の万博ではAI通訳・自動運転車いす・感情認識アシストなど、世界中の最新支援技術が集まりました。
これらは「テクノロジー×共生社会」の象徴でもあり、日本でも今後、行政や企業・地域が連携して活用が広がることが期待されています。
万博を通して見えたのは、障がいのある人を“支援の対象”ではなく、“社会を共に創る仲間”として位置づける発想の大切さです。
◆おわりに
万博の閉幕は、同時に「次の一歩」を踏み出す時でもあります。
世界の取り組みを知ることで、日本の支援もさらに温かく、柔軟に変わっていくはずです。
制度に合わせて生きるのではなく、制度が人に寄り添う社会へ。
それが、万博が私たちに残してくれた“未来へのヒント”なのかもしれません。